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販売車インプレ:HONDA BEAT(PP1)
TORINO CARSのブログをご覧頂きまして誠にありがとう御座います。
不定期掲載となっておりますが、過去にTORINO CARSで販売、取り扱った車両の中で珍しい車両や、通常試乗がなかなかできない車両のドライブインプレッションを『過去販売車インプレ』としてご紹介するシリーズ。
第3回目となる今回はTORINO CARSのメイン販売車種となっているHONDA BEAT(PP1)のドライブインプレッションをご紹介致します。
BEATは初期の車体では生産から29年が経過し、走行距離やカスタマイズ状態によりその車両それぞれ状態が異なり、それぞれの良さや味わいがあるかと存じますが、今回記載致しますBEATのドライブインプレッションは、走行を重ねた中古車状態且つ機関系がオリジナル状態という弊社で販売させて頂きましたBEATの代表的な乗り味インプレッションと捉えて頂けば幸いです。
では、早速ドライブインプレッションを『走行性能』、『乗り心地(ハンドリング)』、『総評』と分けてご紹介致します。
【走行性能】
BEATに搭載されているエンジンはE07A型 660cc 3気筒SOHC12バルブエンジンで、『MTREC』(Multi Throttle Responsive Engine Control) というシステムを採用することで、NAエンジンでありながら軽自動車自主規制枠上限となる64psを8100r/minという超高回転で絞り出す独創のパワートレインです。
この『MTREC』について少し説明しますと、各気筒ごとに独立したスロットルバルブを持つ3連スロットルに、現代のバイクでも採用されている燃料噴射制御マップ切換方式を採用することで、高出力と高レスポンスを狙ったシステムです。
E07Aエンジンのボア×ストロークが66.0mm×64.0mmというショートストローク型エンジンの為、素性そのものからして軽快で軽い吹く上がる特徴を備えていることに加え、前述の『MTREC』の3連独立スロットルと燃料噴射制御マップ切換方式を採用している効果、更には現代車では絶滅してしまったワイヤー式アクセルが組み合わさることで、電子制御の介入の無いアクセル操作に対し極めてダイレクトなレスポンスを味わうことができるものとなっています。
実際の乗り味のおいても、少しのアクセル操作に対して、アクセルペダルがスロットルバルブに直結しているかの様にエンジンが即座に『フォン』と吹け上り、軽量な車体がダイレクトに加速する感覚は本当に気持ち良いものであり、更に高回転型NAエンジンらしく8700r/minのレッドゾーンに向けて『ギュイーン』と一直線に高回転まで回りきる様は他の車では絶対に味わうことのできないこのBEAT特有の気持ち良さと言えます。
またミッションはもちろんマニュアルの5MTですが、ショートストロークでありながら、カチっとしたダイレクトな操作感を実現しており、シフトアップ時にも引っ掛かりの無いスムーズなシフトチェンジが可能なものです。
シフトチェンジ行為そのものが気持ち良いマニュアルはそう滅多にありませんが、BEATのミッションはその気持ち良さを味わうことができるミッションと言え、回す楽しさのあるエンジンと相まって、好きな回転数、好きなタイミングで自らの手でシフトチェンジするという行為は何物にも代え難い快感をもたらしてくれます。
【乗り心地(ハンドリング)】
走行性能の欄にパワートレインがダイレクトと記載しましたが、ハンドリングに関しても非常にダイレクトで操る楽しさをしっかり味わうことができるものと言えます。
パワーステアリングを排したステアリングは路面の状況やタイヤの状況を、振動と反力として的確に伝えてくることに加え、ステアリングを切ったら切った分だけ遅れなく車が反応する感覚はまさにダイレクトであり、『車を運転している』という感覚を色濃く味わうことができるものです。
ただし、決してガチガチなダイレクト感とは異なるものであり、ハンドル操作に対し大き目のロールはするものの、「グラッ」と傾く不快なロールでは無く非常にリニアなもので、軽い車体が思い通りに反応するというしなやかでありながらダイレクト感もしっかりあるという、BEATならではの操る気持ち良さを前面に押し出したハンドリング設定と言えます。
乗り心地は、現代の車両の様に、高剛性ボディーに固められたサスペンションの組み合わせによりもたらされるガッシリした乗り味とは異なり、適度な剛性のボディーにスプリングレートや減衰力の比較的低い設定のサスペンションの組み合わせにより、路面の凹凸を上手くサスペンションとボディー、ブッシュで逃がしている感覚で、鋭い突き上げといったものは感じることが無く、ホイールベースの関係からどうしてもピッチングのひょこひょことした動きは出ますが、スポーツカーとしては良好と評することのできる乗り心地を実現しています。
このハンドリングの良さと乗り心地の両立という点では、現代の車と比較しても決して劣っているものでは無いレベルの高いものであり、加えて気持ち良さという指標ではむしろ上回っている部分が多いと感じます。
【総評】
このBEATという車は『運転する』という行為をダイレクト感じさせてくれる本当に良い車であるとつくづく思います。
それは、1989年、今から約30年前に生まれた自動車だからこそ実現できた乗り味だと思います。
電子デバイスをほとんど介することがなく、排ガス規制が緩かったからこそ実現できる、アクセルペダルにダイレクト且つレスポンシブルに超高回転まで回るエンジン。
贅沢な専用ボディー・シャシーを採用し、開発者が自由に作り込むことのできた、ハンドル操作に対して素直に且つ生々しい反応をしてくれるハンドリングと乗り心地。
サーボの効きすぎていないダイレクトな感触のブレーキ。
現代の車では考えられないプリミティブな機械要素のみで成り立っているからこそ、『走る』『曲がる』『止まる』に関する全ての操作感覚や挙動が人間と車が繋がっているかの様にダイレクトであり、それ故、運転する人間にとって『運転している』という感覚を色濃く感じさせてくれる。
それがBEAT独自の気持ち良さに繋がっているのだと思います。
加えて、オープンカーであるという点も間違いなくその気持ち良さの一因であると思います。
幌を開けたオープン状態で、外の空気や匂い、風を感じ、そしてBEATのエンジンから聞こえる機械音やエキゾーストノートをダイレクトに聞きながらの運転は本当に心から気持ち良いと感じるもので、車を操る楽しさに大きなプラスαの要素をもたらしてくれます。
また、BEATの絶対的な性能は、現代の車ほど高くありません。
ターボ車のような絶対的な速さはありませんし、サーキットのタイムで現れる様な数値的なコーナリング性能も現代のスポーツカー程は優れておりません。
しかし、NAエンジン+MTRECならではの極めてダイレクトでレスポンシブルなエンジンは『車の楽しさは馬力・トルクではないんだ』というものを改めて感じさせてくれるものですし、そこまで性能が高く無いからこそ、アクセルをグイっと踏み込んで『ギュイーン、ギュイーン』と高回転まで回しながら、ミッションを自らの手で『スコッ、スコッ』とシフト操作するという行為を街中やワインディングでも楽しむことができます。
ハンドリング・乗り心地に関しても、比較的低いスピードでも車を操っている感覚を味わうことができますので、ワインディングではもちろんのこと、街中を普通に運転しているだけでも気持ち良さ、楽しさをしっかり味わうことが出来るものです。
そういった意味では、BEATは『日常のリアルスポーツカー』だと言えるかもしれません。
少し古い車で、2シーターオープンカーのBEAT。
定期的なメンテナンスは必要ですし、決して便利で安楽な車ではありませんが、車好きの生活に彩りを与えてくれること間違い無しの車だと思います。
以上、HONDA BEATのドライブインプレッション及び私の感じる総評でした。
私はこのBEATやS2000といった、開発者の意思やキャラクターが明確に車に現れ、そして実際に運転してみてもそれが伝わってくる車が大好きです。
もちろん、現代の車には現代の車ならではの良さがしっかりあり、それはそれで自動車の完成度の高さという点に感銘を受け、大好きであります。
人それぞれ好みや感じるものは違うと思いますが、ドライブインプレッションに記載しました様な感覚がお好きな方にとりましては、BEATは本当に良き相棒になってくれること間違い無しだと思います。
弊社ではこれからもこの良い乗り味を味わって頂くべく、状態の良いBEATを販売できる様に努力して参りますので、BEATにご興味を持たれたお客様はどうぞお気軽にお問い合わせ頂ければ幸甚で御座います。
これからも不定期でこのようなドライブインプレッションをお届けしていこうと考えておりますので、過去販売車両の中で『この車種のインプレをUPして欲しい』など御座いましたら是非リクエストを頂ければ幸いです。
では、失礼致します。