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エンジンにとってベストな慣らし方法とは【その1】
TORINO CARSのブログをご覧頂きまして誠にありがとう御座います。
最近は仕事関連のブログが続いていましたので、仕事とは関係の無いブログということで、今回、次回と2回に渡ってエンジンの慣らしについて記載したいと思います。
車が好きな方、車を大事にされる方は『エンジン慣らし』という言葉は聞いたことがあると思いますし、本ブログをご覧頂いている様な車好きの方は、車を新車で購入した場合、もしくはエンジンをオーバーホール等した際は、このエンジン慣らしを実施している方が大半だと思います。
しかし、昨今は『エンジン慣らしは不要』という意見が大半で、自動車メーカーも不要と謳っていることが多いので、実際どうなの?と思われている方も多いかと思います。
そこで、今回は『エンジンにとってベストな慣らし方法とは【その1】』として、慣らし運転の必要性ついて元エンジン開発者目線で意見を述べたいと思います。
※今回のブログは写真はほとんど無く、文章ばかりになってしまいます。
さて、一般的にエンジン慣らしが不要とされる理由としては、以下に挙げるものがメインかと思います。
「工作精度が上がっているので、もはやエンジン内部にバリなどの発生は無く、必要は無い」
「普通の運転をしていれば慣らし運転は終了する為、特に慣らし運転を意識する必要はない」
これは、正解な訳でも間違っている訳でもないと思います。
では、どういうことか、上記項目毎に話をします。
まずは、
「工作精度が上がっているので、もはやエンジン内部にバリなどの発生は無く、必要は無い」
ですが、エンジンの工作精度が昔に比べると上がっているのは事実ですが、小さなバリはやはりエンジン内に残っていますし、製造工程においてチリやごみは必ずエンジン内に入り込んでいます。
そして、そのバリやチリ、ごみが大きいものであれ、小さなものであれ、基本的にオイルフィルターに捕獲される為問題になりませんが、運悪くバリを噛み込んでしまうと、エンジン慣らしをする、しないは関係無く、エンジン内各部にキズが入ってしまいます。
オイルフィルターで捕獲できない、極めて小さなバリや、新品エンジンの削りカス(例えばピストンリングの表面被膜など)も存在しますが、基本的にエンジンの耐久性に影響を及ぼす程の影響はないと考えていいです(ミクロでみると影響がないとは言えませんが)。
要するに、工作精度うんぬん、バリの有無は、エンジン慣らしの要・不要とはあまり関係が無いと言えます。
続いて、
「普通の運転をしていれば慣らし運転は終了するから、特に慣らし運転を意識する必要はない」
という話。
これに関しては、私は少し違う意見を持っています。
確かに、普通に運転をしていれば、エンジンにとっては何の問題もありませんし、慣らし運転が勝手に終了すると考えることもできます。
しかし、エンジンにとってベストな状態を長い間保つ、もしくはエンジンの出力を最大限発揮させるには、それなりの手順を踏んだエンジン慣らしをした方が良いと思います。
まず、新品エンジン時に、いきなり全開加速等の負荷の高い運転をすることはおすすめできません。
ピストン、シリンダー、ピストンリングや、各部メタル関連、ベアリング関連、バルブシート、オイルシール等が新品状態では被膜の形成や馴染みが不完全なことからから、極初期にいきなり大きな負荷をかけると局部的なかじり等の発生の可能性が高まります。
また、各部クリアランスも最適な状態とは大きく違う状態にありますので、エンジンが稼働し始めた初期は、負荷が少なくなるような優しい運転を行うことで、エンジンを良い状態に保つことができる様になります。
そして、ある程度エンジンを稼働させた後は、エンジンに高い負荷を一定時間以上かけてあげる必要があります。
なぜか?
実際は難しい話ですが簡単に説明しますと、エンジンというものは様々な部品の組み合わせであり、ベアリングやメタル、ギアといった摺動部がたくさんありますが、エンジンブロックやピストン、また様々な部品に負荷をかけて、温度を上げてやり、各パーツが本来あるべき場所に落ち着けてやる、本来あるべきクリアランスとなる様にしてあげる、ということです。
そうすることで、エンジンの摺動部の摩擦力(=フリクション)を小さくすることができ、つまりはエンジンが本来持つ力を最大限発揮できるようになります。
よって、エンジンを大切にするあまりに、エンジン慣らし後半にも高い負荷を入れないでいると、いつまでたってもエンジン慣らしが終わらず、エンジンにとって最高の状態を引き出すことができないということになってしまいます。
以上、つらつらとエンジン慣らしについて書いて参りましたが、上記の様な理由から、エンジンにとってベストな状態を長い間保つ、もしくはエンジンの出力を最大限発揮させる為には、私はエンジン慣らしが必要であると考えています。
実際に、エンジン開発時は、しっかりとエンジン慣らしをしますし、慣らしの方法までしっかりと規定されています。
当然、エンジン慣らしの後半には、高い負荷で連続運転させるという行程も入っています。
また、ちゃんとした手順でエンジン慣らしをした場合と、しない場合では最終的な出力(フリクション)には差異がありました。
エンジン慣らしはしないからといってすぐに壊れるとか、調子が悪くなるということはありませんが、車好きな方、車を大事にされる方におかれましては、エンジン慣らしを行った方が、長い目で見れば実情においても、精神的にも良いのではないでしょうか。
ということで、今回は『エンジンにとってベストな慣らし方法とは【その1】』として、慣らし運転の必要性について記載して参りましたが、次回は【その2】として、私がベストと考える慣らし方法についてご紹介したいと考えています。
では、失礼致します。