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エンジンはどのようにして開発されるのか【その②】
こんにちは。
今日からお仕事で気分が憂鬱という方も多いかもしれませんが、今週末はまた3連休です!
まずは1週間、頑張りましょう!
さて、前回のブログでは、エンジン開発のフローについてご紹介しましたが、今回はその開発フローの中身についてもう少し掘り下げて書こうと思います(長文ですのでご注意下さい)。
開発フローを大きく区分けすると、「砂型エンジンによる開発」⇒「金型エンジンによる開発」⇒「量産」と分けることができると前回書きました。
このように「砂型エンジンによる開発」の次に「金型エンジンによる開発」という順序で開発を進めるのにはもちろん理由があります。
ここで、理由の説明の前に、砂型、金型の簡単な説明をします。
エンジンを構成する金属部品は削り出しの部品を除き、この型というものに溶解した金属を注ぎ込んで、部品を形作ります。
砂型とは文字通り、砂を固めて作った型のことで、この砂型に溶解した金属を注いで作った部品を砂型部品と言います。
そして、その砂型部品で構成されたエンジンを砂型エンジンと言います。
この砂型の特徴は、砂を固めて作るという性質上、型作成の自由度が高く、型の形状変更が容易であったり、1つの試作部品にかかるコストが低くなります。
対して金型とは、金属を削りだして作った型のことです。
金型の特徴は上記の様に金属を削りだして作るものなので、容易な形状変更が難しかったり、型を作ることそのものが困難である為、コストがかかります。
その代わり、金属は砂に比べて耐久性が高い為、同じ型で多くの部品を生産することが可能な為、一般的に量産は金型により行われます。
以上、砂型と金型の特徴を少し頭にいれておいて頂いて、開発フローを見ますと、「砂型エンジンによる開発」の次に「金型エンジンによる開発」となる理由がわかると思います。
はじめに砂型エンジン、パーツにより開発を行うのは、開発初期はトライ&エラーなので、設計変更が頻繁に行われる為、形状の変更を容易且つ低コストで行う必要があるので、砂型による開発から始められるのです。
そして、この砂型エンジン、パーツで「設計」⇒「作成」⇒「テスト」⇒「テスト結果の設計への反映」⇒「作成」⇒「テスト」を何度も何度も繰り返して、目標とする性能、耐久性を発揮するエンジン諸元が確定するまでテストと設計変更を重ねます。
そして、砂型エンジン、パーツによるテストで目標性能、耐久性を達成する諸元が確定したら、続いては、金型エンジン、パーツの作成、テストに入ります。
ここで、砂型試作品で諸元確定しているにも関わらず、なぜすぐに量産へと進まないのかと疑問に思った方もいるかもしれません。
わざわざ金型の試作エンジン、パーツを作成して、金型エンジンによる開発を行うのにももちろん理由があります。
砂型から金型に代わっても、図面の諸元は変わらない為、砂型品と金型品では同等の性能、耐久性を発揮するという考えを前提としているものの、あくまで、お客様の手元に届く量産品は金型による生産品なので、本当に金型で砂型によるときと同等の性能、耐久性が確保できているかを量産に入る前に確認する必要があるのです。
実際には、同じ図面諸元にも関わらず砂型と金型で性能差が表れることは良くあります。
これは砂型と金型では各パーツの表面の粗さや、ひずみ、硬度などにどうしてもわずかな差異が出てしまうからで、そのわずかな差異が性能差として表れてしまうのです。
よって、金型エンジンによる開発は量産前確認というよりも、金型でも再度テストを繰り返し諸元を落とし込んでいくケースも多々ありました。
つまり、砂型エンジン、パーツの場合と同様にテストを繰り返し、金型エンジン、パーツにより、目標とする性能、耐久性を達成し、図面へ諸元を落とし込んでいくのです。
そして、金型エンジン、パーツで目標とする性能や耐久性を達成したら、ようやく量産へと進んで行きます。
量産行程へと進んだところで、私が所属していた研究所部門としてのエンジン開発は終了となります。
実際には、金型テストが完了してエンジン開発が終了しても、エンジンが量産されるまでには、生産を担当する工場部門で工場での量産に向けての行程が多数ありますが、それは生産を司る工場部門のお仕事で、あまり詳しくない為割愛致します。
以上、開発フローを少しだけ掘り下げてご紹介致しましたが、文章の中に何度も「テスト」という言葉が出てきたと思います。
この「テスト」の内容を抜きにしてはエンジン開発を語ることはできません。
ひとくくりに「テスト」と表現しましたが、エンジン開発における「テスト」の内容は大まかに3つに分かれています。
今回ご紹介しました砂型と金型の試作エンジンを多数使用して、それぞれの開発フローの中で、その3つのテストを平行して諸元の決定をしていきますが、次回はエンジン開発の神髄である「テスト」の内容についてご紹介しようと思います。
では失礼致します。